2020.09.09
インタビュー

京大をSDGs先進大学に押し上げた、「行動あるのみ!」の精神とは ~京都大学 地球環境学堂 准教授 浅利美鈴先生

Interview:SDGs 私のアプローチ 08
~京都大学 地球環境学堂 准教授 浅利美鈴先生

 

浅利美鈴氏

京都大地球環境学堂 准教授。1996年、京都大工学部 地球工学科に入学。
在学中は環境保全研究の第一人者として知られる高月紘教授(現・京都大名誉教授、京エコロジーセンター館長)のもとで、
主に家庭ごみについての研究に取り組んだ。同時に、学内の環境を改善する目的で「京大ゴミ部」を立ち上げる。

2002年、京都大大学院工学研究科修了。京都大環境保全センター助手、助教を経て現職。
学内や地域の環境改善活動、SDGs活動を一貫して牽引し続けている。

 


 

さまざまなジャンルで活躍されている方々に、
広くSDGsにどう取り組んだらいいかというヒントを聞くインタビュー企画。

今回は、京大で主にごみの研究をされている浅利美鈴先生に伺いました。
「もったいない精神」が育まれた子ども時代、環境問題に対する興味の芽生え、
そして、「京大ゴミ部」の立ち上げなど…。

あらゆるごみ問題に向き合い、京大や地域の環境改善に奔走する浅利先生に、
多彩な取り組みと、SDGs活動を成功させるために必要な心構えなどをお聞きしました。

 

「We are the World」に衝撃を受け、社会貢献への意欲が高まった

 

 

浅利さんは、ごみ研究のスペシャリストでいらっしゃいます。
どのような幼少期を過ごし、環境問題に興味を持つようになったのでしょうか?

私は、京都人の母に育てられました。京都は、「もったいない精神」や「ものを大切にする文化」が息づく街。
母や先生、学校のお友達など、みんなが良いものを長く使うことを意識している環境で、
私も自然と、ものを大切にするようになりました。

鉛筆1本1本に名前を書いて、なくしたときはとことんまで探し、そしてギリギリまで使い切るという…。
食べ物も絶対に残しませんでしたし、それが当たり前という感覚で過ごしていました。

 

そんな私が、本格的に環境問題を意識するようになったきっかけが、
小学校中学年のときに参加した「水の作文コンクール」です。

夏休みの課題だった節水に関する作文がたまたま大きな賞を受賞してしまい、
そこから一気に節水少女になりました(笑)。

 

もうひとつ、大きなきっかけとなったのが、「We are the World」との出会いです。
「We are the World」は、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、シンディ・ローパーら
そうそうたるスターたちによってつくられた、アフリカの飢餓と貧困を撲滅するためのキャンペーンソングです。
楽曲を聴き、MVを見て、さまざまな障壁や違いを乗り越えて芸術の力で世界を動かそうというパワーに圧倒され、
居ても立ってもいられなくなったことを覚えています。
「私も世界のためになにかやらなきゃ!」、そんな思いに突き動かされて、
通っていた中学で募金を始めたり、ボランティア活動に参加したりするようになりました。

 

こうしたことがきっかけで、中学生ぐらいのときに、
環境問題やそれらを動かすメディアの仕事をしたいと思うようになりました。

高校時代には「24時間テレビ」にボランティアスタッフとして参加したことも。
小・中・高を通して、とにかく「社会貢献がしたい」という気持ちが強い子だったように思います。

 

その後、京都大工学部地球工学科に進学されました。大学時代はどのような活動をされていたのでしょうか。

 

入学当初はスキーに没頭していたのですが、けがをしてしまい、
そこから真面目に大学に通うようになりました。

大学に通いだして驚いたのが、環境に対する意識の希薄さ。
さまざまな研究が行われていることもあり、24時間、不夜城のように煌々と灯りがついていて、
ごみの分別も十分なされていない状態でした。
実験器具の清掃などに使う高価な紙フキンや消耗品もバンバン使われていて…。

ものすごく衝撃を受けたことを覚えています。

 

当時は、ちょうど京都議定書が採択された時期でもありました。
また、環境管理に関する世界基準であるISO14001の導入が促進されたタイミングでもあり、
社会的に、環境問題に対する関心が高まっていた時期でした。
近隣の京都精華大が日本で初めて大学全体でISO14001を取得したというニュースも話題になりました。

 

それで、「これは負けていられない!」「足元から変えていかなければ!」と思い、
「京大ゴミ部」という名称で、京大をエコキャンパスにする活動を始めたのです。

 

大学の常識を変える!「京大ゴミ部」の環境改善活動とは

 

京大ゴミ部では、具体的にどんなことをされていたのですか?

 

まずはISO14001について勉強をしながら、京大に導入するための提言書を作成していきました。
紙ごみや電気の消費をマネジメントする方法や、学内に導入する際の手順をまとめるなどして資料をつくり、
当時の総長である長尾誠先生のところへ持って行って、
「ぜひ考えてください」というようなことをお伝えしました。

 

次に行ったのが、“実践”です。
提言をして終わりではなく、実際に運用してみようということで、
私が所属していた研究室や新たにできた桂キャンパスで、

ISO14001を導入するために必要な、環境に関するPDCAサイクルを回す取り組みを行いました。
他に、学内の消費エネルギーについての実態調査なども実施しました。

 

学内の反応についてはいかがでしたか?皆さん好意的な態度で協力してくださったのでしょうか?

 

ゴミ部の仲間集めは非常にスムーズに進みました。
私自身が地球工学科という、環境について学ぶための学科に所属していたこともありまして、
クラスメートに呼びかけたら、50人中40人ぐらいが賛同してくれたのです。人手は結構豊富でしたね。

 

一方で、研究室の先生方には、なかなか受け入れてもらうことができませんでした。
先生方は研究に生涯をささげる、各分野のプロフェッショナルです。
「研究より大切なものはない」「研究は聖域である」と考えていらっしゃる方も多く、
そこに省エネという概念が入り込む余地はなかなかありませんでした。
門前払いを食らうことも多く、当時はかなりショックでしたね。

 

そこで、学内だけで活動を行うのではなく、学外の人たちを巻き込もうと思い立ちました。
外に出て、子どもたち向けに環境教育を行ったり、市民の方と一緒に勉強会をしたり。
これら一連の活動が、5年、10年と続き、広がって、少しずつ学内の空気が変わっていき、
2013年、地域の方とともに持続可能なキャンパスの実現をめざすプロジェクト「エコ~るど京大」が生まれたのです。

 

「エコ~るど京大」は、浅利さんや京大の学生が中心となって運営されている参加型のプロジェクトだとお聞きしています。
実際には、どのような活動をされているのですか?

 

SDGsに関するオープンラボ(公開講座)やディスカッション、
調査、提言、情報発信など、さまざまな活動を行っています。

最近の取り組みの中で特に話題になったのが、SNSで展開した「#かばんの中のプラ」キャンペーンです。
これは、学内外の関係者がかばんの中身を公開し、
そのなかにあるプラスチック製品を数え、ハッシュタグを付けて報告するというもの。

併せてプラスチックを分類して削減への行動につなげるための「京都大学プラ・イド チャート」も開発し、
学生たち自らが実践や検証をした上で発表しました。

 

こうした活動がきっかけになって、2020年、新たに走りだしたのが、雑誌『FRaU』との共創企画、
「みんなのプラ・イド革命 超SDGsリーダー500人の大編集会議」です。
今年7月に、小学5年生から70代まで多世代・多分野の方に参加いただき、
まずは「かばんの中のプラ」を減らすためのアイデアについてのオンラインディスカッションを行いました。
その後、導き出されたアイデアを各グループで検証・考察し、約20の取り組みへと絞り込んでいます。
現在はさらなる展開に向けて準備をしているところです。

 

京大ゴミ部を立ち上げてから約20年。地道な活動が少しずつ評価され、かたちを変えて浸透し、
京大は2019年、世界の大学SDGsランキングで日本における第1位を獲得するまでになりました。
私たちが始めた活動が後輩たちに引き継がれ広がっていき、そして今、大学を変えつつある。
その手応えを確かに実感しています。

 

身近なことから行動しなければ、世界は決して変えられない

 

 

京大ゴミ部を創設し、総長に提言を行い、
その後も次々と、環境問題に関する活動を立ち上げ続けていらっしゃる浅利さん。
ものすごいバイタリティーとエネルギーですよね。
そのパワーは、いったいどこからやってくるのでしょうか?原動力となっている思いについて教えてください。

 

ただただ「これはもう伝えなきゃ!」という、ある種の思い込みで突っ走ってきたように思います(笑)。
大学生の頃から、「自分の足元から変えていかないと、世界なんてとても変えられない」と思っていましたから。
昔から社会問題の研究者はたくさんおられますが、外で立派なことを言っていても
、足元にあることがおざなりになっているというケースもあるかと思います。
「それじゃあかんやろ」「まずは足元やろ」、そう思って、
いつも「Think Globally, Act Locally」を大切に、とにかく行動するように心がけています。

 

ちなみに現在は、京都大地球環境学堂の准教授としてごみの研究をしたり、
「エコ~るど京大」に関わったりしながら、災害廃棄物を効率よく処理する取り組みにも注力しています。
先日も、令和2年7月豪雨で被災した熊本に入り、「被災者やボランティアの方に事前にごみを分別してもらい、
畳なら畳のみ、木材なら木材のみというふうに、1品目のごみのみを運ぶ車を優先的にごみ置き場に通す」という、
全国初の、災害廃棄物における渋滞解消のための取り組みを支援しました。
他に、過疎化に苦しむ京北地域(京都北部地域)の地域創生にも乗り出しています。

 

大学に閉じこもって研究だけをするのではなく、外に出て、アクティブに!
今も現地に入って、人を巻き込みながら活動を広げるということをなにより大切にしています。

 

浅利さんは、全国あらゆる地域に出向いていますよね。過疎地、被災地、さまざまな課題を抱える地域など…。
いつもフィールドワーカーとして活発に動いていらっしゃる印象です。
さまざまな場を通して、多くの若者と接しているかと思いますので、
最後に、若者に向けてのメッセージをお聞かせください。

 

学生時代にめいっぱい人にぶつかって、
「いろんな考えの人がいるのである」ということをしっかりと目の当たりにしてほしいなと思います。
大学に入るまでは似た価値観の人と接しながら一直線の道を歩いてきた人が多いと思うのですが、
社会に出たら、もっと言うと世界に出たら、驚くほど異なる価値観にぶつかることが続きます。
そういう人たちと認め合って、知恵を出し合いながら生きていくためにも、
ぜひ若いうちにいろんな人の価値観に触れていただきたいなと思います。

 

その上で、誰ひとり取り残さないように。取り残されそうな人に目を向けられるようになってほしい。

 

環境問題を解決し、SDGsを達成するために必要なのは、
「このままではいけない」という思いと、人と共に歩む力です。
難しい理屈や理論について考えて立ち止まってしまうのではなく、直感を大切に、まずは行動してみてください。
例えば、エコバッグを持ち歩くとか、友達と一緒にごみについて話し合ってみるとか、簡単なことで構いません。
一歩踏み出すことが明日へとつながるのだと、私は信じています。

 

 


浅利さんのインタビューはウェブ電通報にも掲載されています。
少子高齢化が進む中で新たに生まれた「ごみ問題」に対する提言など、こちらの記事では触れられなかったメッセージも。ぜひ併せてご一読ください。
https://dentsu-ho.com/articles/7494

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