第73回広告電通賞(2020年)で国内の総合広告賞としては初めてSDGsをテーマにした賞である「SDGs特別賞」が設けられました。
近年高まるSDGsの必要性と期待を背景に、広告コミュニケーションという手段を用いて、サステナブルな社会の実現を目指した広告主をたたえるものです。
第74回(2021年)は貝印株式会社の「バーチャルモデル広告『剃るに自由を』」が受賞しました。世界的なボディポジティブのムーブメントのなか、ムダ毛を剃るか剃らないかは本人の自由であるというメッセージを、剃刀(かみそり)のメーカーである貝印が発信した点が高く評価されました。
バーチャルモデルの起用により、ある種のタブーであるムダ毛への言及を抵抗なく可能にした、多様な考え方に寄り添うクリエイティブが作り上げられています。
SDGs特別賞の選考委員からは以下の意見が寄せられています。
・「タブーに挑戦する企業姿勢が素晴らしい。同調圧力、固定観念が強い日本において、しかも剃刀の老舗である企業が一見矛盾するような広告を出すという効果的なメッセージ性を高く評 価したい。」
・「『見た目』を重視する広告の流れが変わってきたのではないか、個々の価値観の変化や、個人の自由を尊重するというこの企業の人権へのしっかりとした視点が感じられた。」
・「大胆な表現。世の中も揺れた。その話題性と社会への影響力、実際に女性の体へのネガティブな広告などの自粛につながったので、起爆剤となる広告として良かったと思う。」
受賞作品はこちらから⇒https://www.kai-group.com/news/id/758/
金田晃一選考委員長と貝印の齊藤淳一様の詳細インタビューがウェブ電通報(2022年1月17日)に掲載されています。併せてお読みください。
https://dentsu-ho.com/articles/8041
また、今回は惜しくも入賞を逃したものの、選考委員から高い評価を受けていた作品をご紹介します。
●TikTok For Business Japan「Tiktionary」
TikTok For Business Japan Global Business Marketing-Japan
木部喬 Produce Team Director
TikTok For Businessでは、TikTokを活用した新しいクリエイティブの在り方について、常にあらゆる角度から検討しており、その中の一つがこのプロジェクトです。TikTokは多彩な動画が投稿されており、それぞれハッシュタグを付けていますが、人によってモノの見方が違うように、動画にもハッシュタグにもいろいろな意味が込められています。感覚に訴えかける動画はノンバーバルなコミュニケーションや理解につながるため、世界中の多様な人々のモノの見方が、言葉の壁を超えていろいろな人に伝わるのではないかということが「TikTionary」発想の原点です。 制作にあたり苦労した点は、多種多様な価値観をキュレーションして表示する「今までにない動画辞書」を実現するため、世界17カ国の言語に対応しており、公開時は約90単語にひもづいた映像で構成。何度も見るたびに「新しい発見」を感じられるUIにこだわりましたが、国内外の賞 でプロジェクトに対し評価をいただきました。TikTionaryコンセプトムービーでは、TikTionaryが提唱する「世界の多様な価値観に触れ、コトバに潜む固定観念を塗り替えて、新しい自分たちの世界を定義する」ということを表現しています。
▽TikTionaryサイト URL:http://tiktionary.com/
・TikTionary “art” URL:https://vt.tiktok.com/RMyfHK/
・TikTionary “feast”篇 URL:https://vt.tiktok.com/RMp1wd/
・TikTionary “happy”篇 URL:https://vt.tiktok.com/RMQCbU/
●ハウス食品「もっとカレーだからできることプロジェクト」
ハウス食品グループ本社株式会社 コーポレートコミュニケーション本部
広告統括部 生田幸平企画制作課長
「カレーでおいしく減らそう、おうちの食品ロス。」というコピーで、食品ロス削減を啓発するCMを制作・出稿しました。CMで発信するだけではなく、 “もっとカレーだからできることプロジェクト”という社内横断の活動に参画。お客さまの実態を把握・寄り添うためにアンケート調査を実施し、どうすれば押しつけではなく、お客さまに食品ロス問題を自分ゴト化していただけるか、という点を中心に議論・検討を進めました。その結果、日々発生する食品ロスへの気づきにつながるよう、日常の1シーンを切り取って課題提起していくCMストーリーが出来上がりました。
CM放映・サイト公開後、各メディアに取り上げていただき、取り組みについて知っていただく契機になりました。コロナ禍もあり、家庭の食品ロスに対する認知・理解は向上していますが、まだ道半ばと考えていますので、本業を通じた社会課題解決にも取り組みながら、食品ロス削減の啓発活動にも引き続き取り組んでいきます。
“もっとカレーだからできることプロジェクト”特設サイトURL https://housefoods-group.com/activity/foodloss/index.html
そして2022年。第75回広告電通賞のSDGs特別賞は、2021年4月1日から2022年3月末までに実施された広告作品を対象として、募集を行います。https://adawards.dentsu.jp/assets/daaDownload/daa75/75th_daa_guide.pdf
SDGs特別賞への応募は、広告電通賞の全7部門(プリント広告、オーディオ広告、フィルム広告、OOH広告、ブランドエクスペリエンス、エリアアクティビティ、イノベーティブ・アプローチ)のいずれかへの応募が必須。そのうち、全国5地区の地区選考を通過した作品が選考の対象になります。
評価の視点は、全7部門共通で「ターゲットのこころを動かす力があるか」「広告主の戦略が伝わるか」「チャレンジが感じられるか」「社会的多様性は保たれているか」。
SDGs特別賞の評価の視点として、「『サステナブルな社会』実現のためのアイデアがあるか」「『誰一人取り残さない』など、SDGsへの思いが感じられるか」「SDGsコミュニケーションに『誠実』に取り組んでいるか」の3点が加わります。
選考委員は、SDGsに高い見識を持つ各界の専門家にお集まりいただき、選考委員長はNTTデータ総務部サステナビリティ担当シニア・スペシャリストの金田晃一氏、一般企業から3名、メディアから1名、NPO他から4名、クリエイターから2名の計11人で構成されました。
多岐にわたる専門分野をバックグラウンドに持つ選考委員の皆さんからメッセージをいただいています。(選考委員長以降役職は2021年12月現在)
金田晃一選考委員長(株式会社NTTデータ 総務部サステナビリティ担当 シニア・スペシャリスト)

最終選考に残った作品には二つの傾向が見られました。一つめは自社の製品・サービスをフックにしてメッセージを発信する傾向、そして、もう一つは作品上で社会的なインパクトまで描き切る傾向です。自社の社会的な存在意義を意識したパーパス経営に対する関心が高まっていますが、サステナビリティ広告にも、その影響が表れているのかもしれません。
2030年に向けて、広告の世界もサステナビリティのねじが巻かれ始めているようです。
上原大祐委員(特定非営利活動法人ディーシップスミニ 船団長)

言葉に敏感な世の中で良いものを作り出そうとしても一つのメッセージでマイナスになってしまうことがある難しい広告ですが、人の思考や心を動かしたり、文化を変えていくような面白く斬新な「はっ!」「Wow」を届けられる作品を期待しています!
島田由香委員(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 人事総務本部長)

広告電通賞SDGs特別賞がスタートしてから2回、この素晴らしい賞に審査員として関わらせていただけていることに心から感謝しています。困ったことは、すべての応募作品に深く響くストーリーがあり、一つ一つを夜な夜なじっくりゆっくり感じ切るために寝不足になること!そしてすべてが素晴らしい作品なので、選ぶのに悩みまくって時間がかかること!この賞の存在がさらに知られることは、多くの人が私たち人間の本質の豊かさに気づき、社会がさらに良くなることにつながることを確信しています。2022年も楽しみです!
たかまつなな委員(株式会社笑下村塾 代表取締役)

何もやっていないのに、「なんちゃってSDGs」を押し出す企業もいます。そんな中、貝印の広告には、本気度を感じました。自社の製品を問い直す。本当に自社の製品は社会に良いのか。それが誰かを傷つけていないのか。そういう自責を込めた広告や、多様性を意識する広告、むしろ利益相反するが社会的意義のためのメッセージを見て、社会の変革を感じました。
原野守弘委員(株式会社もり 代表 クリエイティブディレクター)

表現としての優劣ではなく、企業の行動として「広告」を審査することは新鮮な体験でした。クリエイティブとしてはやはり表現が気になってしまうのですが、こういう視点のアワードがあってもいいなと思いました。受賞された企業の方、おめでとうございます。
堀江由美子委員(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシーヘッド)

コロナ禍で殺伐とした心にうるおいをもたらしてくれる作品が多く集まった中、ザラッとした強烈なインパクトが残ったのが今回の受賞作品でした。差別や偏見やステレオタイプに屈しない、自由な意思の痛快な後押しの一方で、バーチャルモデルの起用は、私たちの周りに根強く残る差別や偏見の存在を際立たせているようにも感じます。リアルな個々の人間が、自らの意思で表現し行動できる、そんな日の近い到来を願って。
松中権委員(特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ 代表)

SDGsの17ゴールで一番大切にしたいのは「17. パートナーシップで目標を達成しよう」です。地球上にある課題は山積みのなか、多くの主体といろんな壁を超えて協働し、どれだけ解決速度をあげ、影響範囲や深度をひろげられるか。コレクティブ・インパクト型の取り組みが重要だと考えています。昨年よりもさらに、広告領域から飛び出た実体ある取り組みが増え、刺激と希望をたくさんいただきました。ありがとうございました。
三宅香委員(イオン株式会社 執行役 環境・社会貢献担当)

メッセージとその企業の想いがはっきりと伝わってくる作品が多く、とても選考に迷いましたが勉強にもなりました。私自身、企業として広告を出す側でもあり、SDGsの重要な要素でもある、企業にとっての本業である事業活動を通した活動とメッセージであることに注目しました。単なる社会貢献活動ではなく、事業を通して世界をより良い方向へ変えていくこと、そして次世代にその願いが届くことを願っています。
村田友和委員(株式会社日経BP 日経ESG経営フォーラム業務部)

急速にサステナブルな社会構築が求められ、要求される時代になりました。どの分野でも新たな価値の創造が必要になってきます。
今回の受賞された貝印様は新たな手法や価値創造で素晴らしい作品でした。今後も斬新な作品をお持ちしております!
森本千絵委員(goen゜主宰 コミュニケーションプランナー アートディレクター)

生きるということ、
生かすということ、
では、どうすることもできない未来のあり方を企業の力で結び導く時代だと思います。
すぐに効果や結果がでることではなく、持続し続けることにより明日は必ず少し変化していくものだと思います。
私たちがそれぞれの立場でも共鳴し参加できる道を作ってくださる取り組みに出会いたいです。そしてそれが利他であり、互いに幸せになれることであってほしいと願います。
米田惠美委員(米田公認会計士事務所 所長)

今年もすてきな作品との出逢いがたくさんありました。社会課題と自社の強みを組み合わせるアプローチ以外にも、自社が生み出してきたネガティブな影響についても真摯(しんし)に向き合おうとする姿勢の作品、問いを投げかける作品などが見られました。SDGs広告賞も2年目に突入し、より奥行きが出てきているように感じています。広告を通じて、人と社会がより心豊かになっていくことを願っています。貴重な機会とご縁に感謝しております!