第6回「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」が2月24・25日の2日間、パシフィコ横浜 ノースで開催されました。
今年も「REGENERATION(リジェネレーション=再生)」をテーマに、ビジネスを変革し企業ブランドを構築することで、お互いが豊かになる持続的な環境や社会、経済をどのように作り出していくか、幅広く議論されました。オンラインとのハイブリッド開催により、参加登録者は4513人、88を数えるセッションに273人の登壇者と例年以上に盛況となった、その概要をレポートします。
すべてのご紹介はできないのが残念ですが、頻出したキーワードはなるべく多く拾いましたので、ご容赦いただければ幸いです。

もはや恒例になりつつある会議のオープニングを飾った今年の若者は、WORLD ROAD共同代表の平原依文さん。小学2年生から単身で4カ国に留学し、世界201カ国で自身の「夢」を軸に活動するZ世代、ミレニアル世代の夢を一冊にした本『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』を共同出版した彼女は、国籍・人種・性別・年齢・学歴をはじめとする見える境界線だけでなく、宗教・生い立ち・偏見・異文化など見えない境界線をも溶かすにはどうすればいいか、それは一人一人が持つ夢から学びあうことで境界線が溶けるはずだと力強く語り、最後に「What’s your dream?」の問いかけで締めくくりました。
また毎年これを楽しみにしている参加者も多い、数々の企業トップが登壇するプレナリーセッション。一つ一つの社会課題は一見関係ないようでいて、それぞれつながっていることに着目することで変革の可能性が生まれるという話は、事業活動を社会課題解決にどうつなげていくかのヒントになったと思います。
初日プレナリーのクロージングはセイコーエプソン代表取締役社長の小川恭範さん。創業の地である信州諏訪の自然環境との共生から、特に高い評価を得ている再生エネルギー化への取り組み、さらにデジタル捺染(なっせん)技術によるファッション・アパレル業界との連携による低環境負荷・労働環境改善・資材工程削減の取り組みを紹介。ストーリーやエンゲージメントが社会課題解決の鍵となる先進的な事例だったかと思います。自分たちの存在意義、事業活動の原点を見つめる誠実な姿勢が印象的でした。

初日のランチセッションは、「サステナビリティ広告」に見るクリエイティブの可能性について、第74回広告電通賞「SDGs特別賞」選考委員長のNTTデータ 総務部サステナビリティ担当シニア・スペシャリスト金田晃一さんのファシリテートで、同じく選考委員の一人である、もり代表クリエイティブディレクターの原野守弘さん、SDGs特別賞を受賞した「剃るに自由を」を企画担当した貝印広報宣伝部の齊藤淳一さん、畑谷友香さんが、受賞のポイントや経緯・反響など、実際はどうだったのか、お話しくださいました。この企画は特にSDGsを意識したわけではなく、創業の地である岐阜県関市の職人から受け継がれてきたお客さまを大切に考える「野鍛冶の精神」から、SNSを含めお客さまの声に誠実に向き合うことで、自然に生まれたということです。メインコピーである「ムダかどうかは、自分で決める。」の、“自分で決める”選択の自由が、今回の剃ることから離れてさまざまな社会課題の解決につながるのではないか、というお話でした。
いい商品だから買ってください、という時代ではなく多様性を尊重するからこそ、買うか買わないかはお客さま一人一人の自由、お客さまの生き方で決めてください、というメッセージが鮮烈でした。
午後のセッションも数多くあった中でいくつかをご紹介します。
一つは企業のサステナビリティ経営について、カシオ計算機ESG・総務部サステナビリティ推進室室長の五十嵐和典さん、ブリヂストンGサステナビリティ部門部門長の稲継明宏さん、三井住友フィナンシャルグループ企画部サステナビリティ推進室室長の竹田達哉さんのパネルディスカッションです。
不確実性が高まり、エンゲージメントの多様化が進む今、サステナビリティ経営にとって重要なのはトップのコミットメントはもちろんのこと、サーキュラーとレジリエンスの強化であり、さらに今後は非財務価値、特に人的資本の数値化や制度化、レポーティングのユニークネスに発展していくというお話でした。サステナビリティ経営にとって、非財務価値の中でも人的資本にフォーカスが当たるのは、まさに今のトレンドでしょう。
もう一つは「サプライチェーンの鍵、人権をどう守るか」をテーマにしたパネルディスカッション。
日本ロレアル財務・管理本部購買部パーチェシングマネージャー兼人権レスポンデントの谷亜由美さん、EY気候変動・サステナビリティサービスシニアマネージャーの名越正貴さん、三井不動産サステナビリティ推進部部長の山本有さんが登壇し、サプライチェーンを含めた人権デューデリジェンスにおける具体的な取り組みを紹介されました。
特に不動産業界のまちづくりにおいては、テナント企業の従業員やマンション入居者、商業施設の来訪者はもちろん、建設会社や土木業者、地権者、地域住民など、広範囲に及ぶステークホルダーの人権リスクを把握して低減に向けた対応・改善策を検討するという話では、生活者にとっても身近な内容で理解が深まりました。

初日の最後にもう一つだけご紹介したいのは、まさに再生の鍵といえそうな「自然の循環を取り戻し再生する」というテーマのセッションです。
コンポストによる循環型農業を全国さらに海外で推進する三鷹鴨志田農園 農園長の鴨志田純さん、海外のさとうきび農園と製品工場とで循環を促す味の素サステナビリティ推進部シニアマネージャーの国田佳津彦さん、多摩地区の中央大学の事例を中心に林業、木材の循環型経済を解説する竹中工務店木造木質建築統括の松崎裕之さんが、登壇されました。
人や地球のサステナビリティにとって、命や暮らしを支える第一次産業の重要性が高まり、さらに最新の生物テクノロジーを活用したイノベーティブな取り組みや地域での連携で、いかに捨てないか、食品残渣(ざんし)や生産過程廃棄物を資源・価値に変えるという発想は今後に希望を抱かせる内容でした。
初日が終わって今年は、SDGsあるいはサステナブル・ブランドにおいて、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルはもとより、ESG、パーパス、人的資本、地方創生、多様性、といった、非常に多岐にわたる領域に深く経営戦略の議論が及んでいる、という印象を強く受けました。また、まだ取り組み始めたばかりの企業・団体のご担当者も、異業種や同業他社、NPOあるいは産官学連携による共創が必要であり、そのためにも誠実に発信を続けることが重要であるという認識が、浸透し始めていると感じました。
この盛大なイベントが持続可能であるために、サステナビリティの取り組みを強化しています。環境に配慮した空間装飾素材の選定、再生可能エネルギーでの運営、さらにCO2排出量の算出からJ-クレジットにてカーボンオフセットを実施するなど、会場でも来場者にその取り組みがわかるようにしていました。
(後編に続く)