2022.06.29
レポート

自分に合ったやり方”マイ・エシカル”を探そう。      第三弾 若者を政治の意思決定の場に 日本若者協議会代表 室橋祐貴さん

これは「意識が高い」「ハードルが高い」と思われている「エシカル」に対して自分が大事にしたいこと、楽しめるものと関連させたエシカルな意識や行動を「マイ・エシカル」と名付け、私たちが普段の生活ですでにやっている & できるエシカルな取り組みや心がけを見つけ出そうという企画です。

今回は若者の声を政党や政府へ直接届けるための仕組みづくりを行う「一般社団法人日本若者協議会」代表の室橋祐貴さんにお話を伺いました。

 

(日本若者協議会代表 室橋祐貴さん)

 

━━日本若者協議会について教えてください。

室橋:2015年に立ち上げた若者団体で、若者の声を政治に反映するために、政治家や政府、最近では地方自治体なども含めて若者政策全般のアプローチをしています。扱うテーマとしては、気候変動だけでなく、教育など若者に関わるあらゆる課題についてです。会員制となっており、現在個人は約770人、団体では69団体が所属しています。

 

(日本若者協議会のロゴ)

 

━━どうして意識が政治にたどり着いたのですか。

室橋:小学校の頃に、NHKのドキュメンタリーなどで発展途上国の少年兵や衛生環境を目にして、これらは本人の努力の範囲を超えた問題であり、住みやすい・生きやすい社会をつくるのは上の世代・大人の責任であると感じました。それから、主に途上国の支援に携わるために世界銀行やJICAを目指しました。しかし、卒業論文などでIMFや世界銀行の途上国支援を研究する中で貢献度の見えづらさや、また途上国の人にとっては外国人である日本人の自分が途上国の政治に介入することの難しさを痛感しました。

そんな時3.11(東日本大震災)をきっかけに、日本においても深刻な問題がいくつも存在することを改めて感じ、日本の政治で自分のできることに取り組もうと決めました。

 

━━なぜ若者にフォーカスしているのですか。

室橋:日本が今直面している社会問題は実は70年代頃からずっと変わっていません。少ない教育予算や進まない雇用の流動化など。なぜそれらへの改革がなされないのかというと、これまで目先の成果を求めた政策ばかりを打ってきており、またその意志決定が上の世代によって偏った形で行われているためです。

本来は、先を見据えた長期の政策が将来世代を含めて意思決定される必要があります。諸外国ではこの構造を意識的に構築しており、若者の声を政治に届ける若者協議会は欧州などの外国では公的に設けられている存在です。

 

━━組織を運営していて感じる課題は何ですか。

室橋:ずばり持続可能性です。欧州では多くの若者団体が国からの補助金を受けて活動をしています。例えば、スウェーデンでは若者団体への予算が年間約30億円用意されていて、若者協議会は1948年に設置されており、今も続いています。また、フィンランドは年間約94億円の予算を若者団体の支援に使っており、これらの資金は、一定の年齢以下、例えば25歳以下の所属が6割以上いる団体のみに提供されており、若返りが進む仕組みになっています。このような仕組みのおかげで、欧州の若者団体は専属職員が数十人いるなど、安定的な組織運用をすることができています。

一方、日本の場合は学生団体や非営利組織ばかりで、日本若者協議会含めボランタリーな活動となっています。結果的に他の若者団体を見ていても1~2年で潰れてしまうことが多いです。日本にこのような若者支援予算がないわけではないのですが、例えば「子どもゆめ基金」という国立青少年教育振興機構のものがあります。ただ、金額は約10億円で、しかも海外とは性質が異なり、年齢制限などはなく、実績のある団体へお金が回る傾向となり、若者中心の新しい団体は支援を受けられない場合が多くなっています。

 

━━このような政治構造や支援制度に対して解決策はあるのでしょうか。

室橋:公的に若者協議会を設置させることを目指しながらも、前提として、まず若者の意見を聞かなきゃという意識をもっと認知させていく必要があると考えています。日本では、今年6月にこども基本法が成立し、少しずつ改善の方向に向かっていますが、社会的な認識は十分ではないと思います。各政党の公約には被選挙権年齢引き下げなど、若者の声を政治に反映するという内容は盛り込まれていますが、実現していません。日本若者協議会としても提言は行ってきましたが、実現のためには“なぜそのような視点や仕組みが必要なのか”という社会からの理解と要請が必要だと感じています。

 

(2018年に自民党・岸田文雄政調会長(当時)に被選挙権年齢の引き下げを提言)

 

━━若者の声を政治に反映する仕組みの必要性をどう伝えていけばいいのでしょうか。

室橋:言葉だけでは伝わりにくいと思っており、“声を上げることの大切さ”と“若者と大人の声は違うということ”を成功事例を重ねながら見せていくことが重要だと考えています。例えば、生理の貧困※などは男性の年配者には理解が難しいトピックだったりします。だからこそ、当事者が発言をしていく、続けていくことが効果的だと思います。

※経済的な理由で生理用品を購入できない女性や女の子がいること

 

━━当事者が発言するということのハードルをどう下げていけばいいと思いますか?

室橋:日本では、やる前に諦めている人が多いと感じています。ですから、方法の1つは、国民一人一人の声が社会を動かしたという成功事例を広めていくことです。

もう1つが、それぞれのコミュニティでそういう体験をしていくことです。やはり政治へのアプローチだけでは道のりが遠く、また法律を変えるためには時間がかかります。ですから、例えば子どもならば学校や家庭といった身近な社会で民主的に意思決定をする経験を持つなど、どれだけの人がそのような経験を小さな社会でできるかが重要だと考えています。

 

━━改めて、あなたにとってのマイ・エシカル※は何ですか?

※マイ・エシカル=自分が楽しめるエシカルな意識や行動

 

室橋:自分の場合は、他の人がやっているようないわゆる“意識が高い行動”はしていないと思います。それこそ、マイボトルを毎日持っているわけでもないし、ヴィーガンでもないです。それよりも、人々の全体的な行動や意識を変えるために、全体の構造に関わる予算や法律を変えていくことに取り組みたいと思っています。

 

━━日々の消費で意識していることはありますか。

室橋:選択肢があるのであれば、社会的により良いものを選ぶ意識はしています。ただ、我慢して何かをやるというのはストレスだと思うので、無理しない範囲で環境負荷の少ないallbirdsの靴を選ぶなどで取り入れるようにしています。

 

━━日本の若者のエシカルな意識や行動をどう見ていますか。

室橋:大学生や若手社会人などを中心に、構造的に捉える人が増えていると感じます。SDGsなどの実現のためには自分の行動だけではなく、ビジネスなどを通して社会全体で解決していくといった“主権者意識”に変わってきているのではないでしょうか。若者の間で社会全体を変えられるんじゃないかという感覚が少しずつ増えてきていると感じています。

 

━━どうしてそのような意識が増えていると思いますか。

室橋:SNSを通して、グレタさんのような海外の若者の活動を見たり、留学して海外の若者の意識に触れて帰って来る人が徐々に増えています。傾向として、ずっと日本にいる人よりも、一度海外に出た人を中心に増えていると感じます。

最近は、国内でも校則の見直しに生徒が参加したり、コロナ禍で学祭をやるかやらないかを学生が決めるなど、主体的に意思決定する動きが見られてきています。新学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び」というコンセプトが追加された影響もあるかもしれません。中学では21年4月から、高校では22年4月から導入されています。これによって、今の高校生くらいから主体性や意思決定に関する意識はどんどん変わってくると思います。

公立だけでなく、私立では以前から探究学習プログラムをやっていたりする学校もあります。例えば、京都の立命館宇治高等学校では積極的に主権者教育※が行われており、授業で扱った選択的夫婦別姓に関して、その後実際に宇治市議会に高校生として初めて請願を提出し採択されるといった結果も残しています。

※国や社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成していくこと

 

━━選挙が近いですが、今回の参議院選で期待したいことは何ですか。

室橋:各党の公約を見ていても、物価高など目先のことに注力している印象です。しかし、少子化は政府予測より加速している現状で、またカーボンニュートラル2050に向けた進展も十分とは言えません。こうした長期的な課題に対して、今何をしなければいけないかという視点も、若い世代にも、上の世代にも持ってほしいです。

 

━━ネット投票と若者の投票率についてどう思いますか。

室橋:ネット投票については、日本でも近年実証実験を行ってきていて、2018年には総務省で有識者会議が開かれています。20年ほど前に電子投票が試されましたが、2003年に投票所で電源が誤って抜かれたりといったミスがあり、2016年以降行われていません。ネット投票についても失敗した場合どうするかが主に懸念されているかもしれません。実際のプロセスとしては、在外投票で実証実験をした後に、国政選挙に取り入れられる流れだと思います。ただ、まだ海外でも国政選挙はエストニアしか実例がなく、またアメリカの大統領選挙でのロシア介入やフェイクニュースを機にフランス大統領選でも在外投票のネット投票が取りやめになったりといった流れになっています。

さらに、エストニアでもネット投票による若者投票率は上がっていないという現状になっています。実際は、フィンランドなどの近隣国への出稼ぎに出ている(これまでも選挙に行っていた)エストニアの人が利用している模様で、投票率自体は60%台前半とEUでも低い方です。この点を見ても、ネット投票の推進よりも選挙や政治参加に関する意識の変化に注力することの方が大事だと考えています。ただ同時に、短期的には投票環境の改善も重要なので、日本若者協議会としても、投票の仕組み自体に関する提言もしてきて、実際に近年投票所も大学内や駅前などに増えてきています。

 

 

編集後記

政治は個人的にも1番自分事化、そしてアプローチが難しいテーマだと感じてきました。しかし、気候変動を含めてどんな社会課題も解決には政治的アプローチが根本的に必要だと痛感し、個人でも小さいことから始められないかと考えていた際に、室橋さんが代表を務める日本若者協議会が主催している「日本版気候若者会議2022」に参加しました。そこで、改めて切迫した日本の社会課題解決に取り組もうという姿勢を持つ全国の高校生や大学生から刺激を受けました。

政治というテーマも、日本という規模も、1人では身も腰も重く感じると思います。だからこそ、日本若者協議会主催のイベントに参加したり、友達や家族と選挙の話をしてみることから始めるのもいいかもしれません。エシカルな社会をつくるために、自分の未来と生活に関わる政治も身近なことから自分事化していけたらいいですね。

 

(気候若者会議2022として環境大臣へ提言を行った写真)

 

 

執筆者プロフィール

(新!ソーシャル・デザイン・エンジン 稲野辺 海)

全社横断で社会課題の解決に取り組む組織「新!ソーシャル・デザイン・エンジン」のメンバーとして「エシカル消費 意識調査2022」を実施。個人では、エシカル協会主催のエシカル・コンシェルジュ講座を受講し、エシカル・コンシェルジュとして「エシカルな視点」で衣食住の小さな改革とプロボノ活動※に取り組む。

※社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動のこと

 

第二弾の記事はこちら

 

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