2022.09.01
インタビュー

「湘南T-SITE」がチャレンジする、 SDGs×地域コミュニティづくり         ~カルチュア・コンビニエンス・クラブ 鎌田崇裕さん

Interview:SDGs 私のアプローチ 17

「湘南T-SITE」がチャレンジする、SDGs×地域コミュニティづくり
~カルチュア・コンビニエンス・クラブ 鎌田崇裕さん

 

鎌田崇裕氏

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

蔦屋書店company メディア事業本部 本部長

 

大学卒業後、建材メーカーを経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブに入社。SHIBUYA TSUTAYAなどの店長などを歴任した後、代官山 蔦屋書店のPJリーダーを務め、湘南T-SITEを始めとするT-SITE事業の立ち上げを担う。現在は各蔦屋書店/T-SITEの施設コンセプトを軸に、メーカーのプロモーションやコラボレーション企画の立案などに携わっている。湘南T-SITEは街のコンセプトに紐付き、立ち上げの段階から「サステナブルな循環型社会を目指す拠点になる」をコンセプトとして取り組んでいる。

 

さまざまなジャンルで活躍されている方々に、広くSDGsにどう取り組んだらいいか、ヒントを聞くインタビュー企画。

 

今回は、藤沢を中心とした湘南エリアのコミュニティづくりについて、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の鎌田崇裕さんにお話を聞きました。鎌田さんは、蔦屋書店を中核とした商業施設「湘南T-SITE」を藤沢に立ち上げ、同施設で開かれた「湘南博」の実行責任者も務めました。

 

地域の人々が、SDGsを自分ごととして捉え、アクションを起こす……。そのために、湘南T-SITEは何ができるのか?湘南博の事例を交えながらお話しいただきました。

 

お客さまはモノだけでなく、情報・体験・コミュニティを求めている

――鎌田さんが立ち上げた、湘南T-SITEはどのような施設ですか。

 

湘南T-SITEは、蔦屋書店を中核に個性豊かなショップがシームレスにつながり、湘南らしいライフスタイルを提案する商業施設です。同施設は、「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」の一角にあります。この街では、再生可能エネルギー使用率30%以上、二酸化炭素70%削減などの目標を掲げ、各家庭で太陽光パネルを使用して電気を賄うなど、サステナブルな暮らしを体現しています。また、湘南T-SITEには、湘南エリアから広くお客さまが訪れますが、このエリアは海や自然が好きな人たちが多いことも特徴的です。

 

 

しかし、みなさんがSDGsやサステナブルへの意識がとても高いわけではなく、スマートタウンに住んでいる方たちにアンケートを取ってみると、「環境のためにやっていることは、ゴミを分別したりエコバッグを持ち歩いたりしているくらい」という人も一定数いることがわかりました。SDGsやサステナブルを自分ごと化して具体的なアクションを起こすことはなかなか難しいようです。そこで、本の力や、私たちのネットワークをフルに活用して、何かできることがあるのではと考えました。現在、湘南T-SITEは、「サステナブルな循環型社会を目指す拠点になる」というコンセプトのもと、SDGsの達成やサステナブルな社会の実現を自分ごととして捉えてもらうためのヒントを発信しようと取り組んでいます。

 

 

――2022年4月29日から6月5日にかけて湘南T-SITEで開催した「湘南博」についても教えてください。

 

「湘南博」はもともと、2019年に湘南のライフスタイルを発信するカルチャー雑誌「SHONAN TIME」とともに始めた合同企画で、今回が2回目の開催でした。第1回は「湘南が生んだもの」をテーマに、湘南で長年続く店や企業、音楽やサーフィンをライフワークとしている人などに声をかけ、物販やトークイベントなどを行いました。2回目からは、より湘南の人たちの興味関心軸に沿ったもの、社会課題にも貢献できるものにパワーアップしようとSHONAN TIME編集長とチーム内でも話し合い、結果として今回、「湘南発 地球を考える」をテーマに開催することが決まりました。

 

――そもそも湘南博のような企画をやろうと思われたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

 

きっかけの一つは、店に来るお客さんが、モノだけではなく、情報や体験、コミュニティを求めるようになっていると感じたことです。それを強く実感したのが、コロナ禍前に商業施設でのイベントやワークショップを2年間で2000回ほど行った際に、2、3万人ものお客さんが来店してくれたことでした。こうした経験や、マーケティングをしていく中で、モノを販売して利益を得ることだけをミッションとして考えるのではなく、時代の変化とともに、お客さんや社会に必要とされる形に変わっていく必要があると感じるようになりました。

 

また、湘南でSDGsやサステナブルを掲げて取り組む人や企業、自治体などが、私たちに対して期待してくれていることも感じていました。実際、湘南博の企画が動き出し、提案書をつくって個々に声をかけていったところ、多くの皆さまからご賛同の意思をいただくことができました。

 

湘南博では、住民たちが自分ごととして考えられる企画を考案

 

――湘南博ではどのように企画を考えていったのでしょうか?

 

第2回湘南博では、サステナブルな社会の実現に向けて取り組まれている方や企業の取り組みを、展示、販売、トークショー、ライブなど「50のコト・モノ」として発信しました。その際には、「サステナブルな循環型社会」を自分ごととして捉えてもらうために、湘南T-SITEを訪れる方の興味関心軸に沿ったテーマを設定し、企画を考えるようにしました。

 

一つ目のテーマは、「本からの発信」で、SDGsに関連する本などを集めたコーナーをつくりました。自分ごととして捉えてもらうために、本を選定するときに意識したのが、「リスペクトする人からの発信」です。例えば、湘南にはサーフィンに興味のある方が大勢いるため、サーフカルチャーの第一人者の著書や、その人がおすすめする本であれば、関心を持ってもらえるはずだと考えました。普段はあまり本を読まない人でも、この企画を機にSDGsやサステナブルに関する新たな情報を得て、すそ野を広げられればと思っていました。また「SHONAN TIME」でも、湘南博と同じテーマで編集し、雑誌の内容を湘南T-SITEで立体的に体験できることを具体化できるように試みました。

 

湘南博と同じく「湘南発、地球を考える」をテーマに編集した、2022年6月号の『SHONAN TIME』。

 

二つ目は、「食」をテーマにした企画です。湘南地域のフリーマガジン「海の近く」では、湘南博との連動企画として、地産地消やフードロス削減に取り組む人たちを取り上げてもらい、館内で配布しました。また、地元食材や地元でつくったスイーツなどを集めたマーケットを開催したりしました。

 

三つ目は、「モビリティ」の企画です。Fujisawa サスティナブル・スマートタウンには、EVカーや電動アシスト自転車の貸し出しを行う施設があります。モビリティに関する興味関心も高いと考え、一般社団法人e-Mobility協会とともに実施したイベントで、電動車や電動二輪、小型eモビリティの展示・試乗会や、専門家によるトークイベントなどを行いました。

 

トヨタの新型電気自動車「bZ4X」試乗会の様子。

 

四つ目は、「街づくり」をテーマにした企画です。Fujisawa サスティナブル・スマートタウンの魅力や取り組みを発信する「パナソニックと未来のくらしを考えよう」と題したパネル展を実施しました。

 

「パナソニックと未来のくらしを考えよう」のブース。

 

五つ目は、「ライフスタイル」をテーマにした企画として、再生素材を活用してつくったアパレルや、動物性原料を使わないヴィーガンのスキンケア用品など、さまざまな日用品を集めた展開を行いました。

 

地球と環境に優しい日用品を集めたコーナー。

 

――そのほか、湘南博に参加する人たちに自分ごととして考えてもらうために意識したことはありますか?

 

地域の人々の行動変容につながるような情報を積極的に発信するようにしていました。例えば今回参画してもらった企業の一つに、株式会社ゴールドウインがあります。この会社で湘南国際マラソンのプロジェクト責任者をしている方から、マラソン大会で大量に出るゴミを減らすために「マイボトル・マラソン」に取り組んでいるという話を聞き、湘南博のサイトで情報発信をしました。マラソン大会で大量のゴミが出ていることは知らない人が多いと思いますが、それが自分たちの住む地域でも起こっている問題となれば、自分ごととして考えやすいはず。このように一人一人が身近にイメージしやすい、ストレートなメッセージを発信して、行動変容につなげられればと考えていました。

 

地球と環境に優しい日用品のコーナーには、「マイボトル・マラソン」の啓発活動に繋がるPRも大きく展開された。

 

――湘南博に参加した方からはどのような反響がありましたか?

 

週末にイベントに行って運営などを手伝っていましたが、そこで「楽しかった」という声を聞いたり、SNSを通してポジティブな感想をいただいたりしました。子どもに対するイベントもいくつか実施していて、そこで子どもたちが喜んでいる姿が見られたのもうれしかったですね。イベントで出店してくださった人たちからも「これからも継続してほしい」という声をいただきました。しかし私自身、今回の湘南博でものすごく大きな達成感が得られたかというと、正直まだまだです。今後、もっと大きなうねりを起こせるような企画にしていきたいと考えています。

 

オープンプラットフォーム化して、より広がりのある企画を目指す

 

――今後、湘南博で新たに取り組みたいことを教えてください。

 

今回は私たちから声をかけて参加者を集めていきましたが、次回以降はオープンプラットフォーム化できないかと考えています。湘南には、自身の興味関心軸に合えば、情報発信などに協力してくれる人たちがもっと多くいるはずです。私たち制作側だけですべて段取りするよりも、テーマごとに参加者を募る形にすることで、湘南博はさらに広がりのある企画になると感じています。

 

――最後に、若い世代に向けてメッセージをお願いします。

私が社会人になったばかりの頃は、上司やお客さんと関わる中で、新たな情報を得て、経験を積んでいくことが当たり前でした。しかし今の時代、あらゆる情報を瞬時に手に入れることが可能になり、若い人たちは本当にいろんなことをよく知っています。それはとても良いことだと思う一方で、たくさんの情報があるからといって、必ずしも人の心を動かせるとは限りません。時には人と密にコミュニケーションを重ねるような泥臭い取り組みも必要で、それが若い世代の人たちが次の時代を切り開くことにもつながるのではと考えています。

 

湘南博の最終日に、一般社団法人エシカル協会が編集した書籍「エシカル白書2022-2023」の出版特別企画トークイベントを開催しました。Z世代を集めてエシカルについて対話をしようというイベントで、私も開催に向けて協力しました。このイベントのように、今後も私自身、若者たちと向き合っていきたいし、若者たちに自分ごととして考えてもらえるような情報を発信していきたいと思っています。

 

 

鎌田崇裕さんのインタビューは、ウェブ電通報にも掲載されています。蔦屋書店のコミュニティづくりについて、こちらの記事では語られなかったお話も。ぜひ併せてご一読ください。

https://dentsu-ho.com/articles/8288

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