2020.03.31
インタビュー

サステナビリティ担当、金田晃一さんが語る 
今、日本企業のSDGsへの取り組みに求められること

Interview:SDGs 私のアプローチ02
サステナビリティ担当、金田晃一さんが語る
今、日本企業のSDGsへの取り組みに求められること

株式会社 NTTデータ 総務部 サステナビリティ担当 シニア・スペシャリスト 金田晃一氏

 

1987年慶應義塾大経済学部卒業、1993年レディング大大学院修士課程(多国籍企業論)修了。ソニー渉外部通商政策課、在日米国大使館経済部通商政策担当、ブルームバーグ テレビジョンのアナウンサーを経て、1999年からサステナビリティ担当としてソニー(再入社)、大和証券グループ本社、武田薬品工業、ANAホールティングスに勤務したのち、現在はNTTデータでSDGsを活用し、ESG経営/CSR活動の推進に取り組んでいる。2020年に新設された広告電通賞SDGs特別賞の審査員長も務める。

 


さまざまなジャンルで活躍されている方々に、広くSDGsにどう取り組んだらよいかというヒントを聞くインタビュー企画。

 

今回はNTTデータでサステナビリティ担当としてESG経営/CSR活動を推進している金田晃一さん。これまで、ソニーやアメリカ大使館で日本政府との政府渉外業務に従事し、その後、ブルームバーグ テレビジョンに勤務した後、5つの企業で20年にわたりサステナビリティ担当を務めています。SDGsの採択以前からESG経営/CSR活動の推進に取り組んできた金田さんに、サステナビリティ担当の業務、企業のSDGsに対する関わり方の現状と課題、今後の展望を伺います。

 

サステナビリティ担当とは

まずは、金田さんの現職であるサステナビリティ担当とは、どのような業務なのでしょうか?

 

事業活動を含む企業活動全体を通して、社会価値と企業価値の両方を創出し、社会と企業の両方の持続可能性を高めるための「サステナビリティ推進戦略」を立案し、社内関連部署による実践を後押しする業務です。

「サステナビリティ推進戦略」は2つのサブ戦略に大別できます。

前者は「パフォーマンス戦略」。これは、①社会課題の解決に資する製品やサービスの市場への提供活動、②事業プロセスにおいて人権や環境などの側面で社会にかけている負荷を低減する活動、③寄付やボランティア活動に代表される社会貢献活動、の3つで構成されます。

そして、後者は「コミュニケーション戦略」。これは、①「パフォーマンス戦略」を立案・実践するために必要な情報を「社外から収集」する、②その情報を分析して適切な形で「社内に発信」する、③その結果、変化した活動や考え方に関する情報を「社内から収集」する、④収集した情報をベースに、企業情報を適切な形で「社外に発信」する、の4つで構成されます。

金田氏作成

 

「パフォーマンス戦略」は、どのようなルートをたどって企業価値の保全や向上に貢献するか。これについては、SDGsの解説書である「SDGsコンパス」が参考になります。将来/新規市場の開拓、低コストの代替資源利用、優秀な人材の維持や獲得、レピュテーション向上などのメリットを創出し、その結果、売上拡大、コスト削減、生産性向上、リスクの事前回避、リスク発生後の対応力強化などの形で企業価値に効いてきます。

例えば、一部の先進的なサステナブル企業は、貧困、健康、教育などの社会課題が絡み合って存在する途上国に社員ボランティアを戦略的に送り出していますが、この活動は③の戦略的な社会貢献活動の代表例でしょう。社員の社会課題の発見力や解決力を高め、課題を起点とした将来的な新事業の創出を意図する長期的な戦略です。

SDGsコンパスを参考に金田氏作成

 

「協働」の時代には、コミュニケーション戦略が重要

金田さんが感じる、日本企業のSDGsへの向き合い方に関する変化について教えてください。

 

SDGsが2015年に採択されてから5年が経過しようとしています。この5年間で、企業の取り組みは3つめ目の段階に入っていると考えています。まず1つ目がSDGsとは何かを「理解」する段階。2つ目が、各自の解釈のもと、実際にSDGsの達成に貢献するような活動を個々に「実践」する段階。そして現在は、持続可能な社会の実現に向けて、インパクトを創出するために多くの人々を巻き込む「協働」の段階に入りました。

 

「協働」の時代には、他者を巻き込む「コミュニケーション戦略」の重要性が増すということでしょうか?

 

その通りです。別の言い方をすると、「コミュニケーション戦略」には、①から④の全ての段階で、取り組むべき課題が残っています。特に、①の情報の「社外収集」段階を重視している企業が少ない点は少し気になります。例えば、「サステナビリティ推進戦略」の策定に必要な情報が最新でない、また、環境や人権の新ルールの解釈を他者に依存しているなどの問題を抱えていては、それに基づいて実践される活動が社会からの期待に応えることは難しいと思います。このような認識の下、最近では、サステナビリティを専門に扱う会議に加え、国際的な社会・経済システムについて議論する「世界経済フォーラム」(WEF)、最新のIT技術が製品・サービスに応用され、将来のライフスタイルとして展示される「CES」、共感からインパクトフルな協働を導き出す最先端のクリエイティビティやコンセプトを競う「カンヌライオンズ」(CANNE LIONS)などの国際会議の動向に注目していました。

金田氏作成

 

日本の企業が「サステナビリティ推進戦略」を進めていくために重要なことは何でしょうか?

 

個人的には、「社員エンパワーメント」に着目しています。事業を通じて、社会課題を解決しながら収益をあげる社員、言い換えれば、ソーシャル・イントラプレナー(社内の社会起業家)の育成・獲得・リテンションが急務と感じています。具体的には、社員に対して、「課題の現場」「ルールメイキングの現場」「人の現場」という3つの現場に触れる機会を提供することが重要だと考えます。

まずは、「課題の現場」です。社会課題に関する情報は、人の話を聞く、あるいは、文献に当たることなどでも得られますが、課題のリアリティに触れることで、課題を再定義し、解決する力が養われます。先ほどお話しした、先進的なサステナブル企業が、さまざまな社会課題に直面する途上国に社員ボランティアを戦略的に送り出すアクションは、その一例です。

次に、「ルールメイキングの現場」。研究、開発、調達、製造、マーケティング、販売、そして、経営戦略、広報、IR、総務、人事、法務、監査などの全ての部署において、社員が自分の業務に関わる重要なルール作りの国際会議に参加し、社会と自社のサステナビリティを念頭に置いて発言する、できれば、イニシアティブをとるなどの影響力を行使すれば、「サステナビリティ推進戦略」の実効性は高まります。そのような国際会議で発言/投票権を得るためのスポンサー費や事務局サポートにかける手間は、コストでなく投資であると発想を変えることも必要でしょう。

そして「人の現場」。それぞれの業務に関わる第一線で活躍している方々に直接触れ、そのような方々の考え方や社会との関わり方を学ぶ。サステナビリティ担当の私の場合は、これまで、CSVを提唱したマイケル・ポーター教授、アショカ財団を立ち上げ、社会起業家を育成するビル・ドレイトン氏、経済、社会、環境のトリプルボトムラインの重要性を示したジョン・エルキントン氏、国連グローバル・コンパクトの事務局長を務めたゲオルグ・ケル氏などのインフルエンサーと直接対話する機会を得ましたが、世界のサステナビリティ・スペースを牽引する方々の発想と情熱から、さまざまなインスピレーションを得ています。

 

NGO/NPOへの支援を通じて、社会課題の解決を目指す

現在NTTデータではどのようなことに取り組まれているのですか?

 

NTTデータは、2019-21中期経営計画に、環境(Environment)、社会(Social)、 ガバナンス(Governance)を考慮したESG経営を通じて、SDGsの達成に貢献することを明記しました。また、これに合わせて、5年ぶりに、CSR重要課題(マテリアリティ)の見直しを行い、優先的に取り組む12個の課題をセットしました。

現在は、これらの課題に対応したKPIを策定中です。私は、これら一連の活動に関わり、現在は、特に、企業のSDGsに向けた取り組みをサポートしている経団連とのコミュニケーション、国内外の社会課題を深く理解しているNGO/NPOとのプログラム形成、SDGsを活用したESG経営/CSR活動の社内浸透などを進めています。

 

金田さんが今後SDGsにおいて取り組んでいきたいのは、どのようなことでしょうか?

 

まずは、社会課題の解決に大きなインパクトを生み出す事業の創出に、サステナビリティ担当の立場から、引き続き関わっていきたいと思います。加えてもう1点。 SDGsは企業、政府、NGO/NPOなどさまざまな組織が「協働」する、すなわち、コレクティブ・アクションで達成を目指す目標です。

NTTデータが持つITのノウハウを使って、特に、NGO/NPOの組織基盤を強化し、活動による社会インパクトを向上させることで、社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。具体的には、STO(Social Technology Officer)という日本初の職業を確立する活動の支援をしています。STOとは企業のCTO(Chief Technology Officer)に相当するもので、NGO/NPOのIT戦略づくりを経営の観点からサポートします。

STOのアイデアは元々、日本NPOセンター、Code for Japan、ETIC.という三つの団体が推進していたものですが、NTTデータはこの考えに賛同し、2019年度から「STO創出プログラム」を立ち上げ、人的、経済的な支援を開始しています。

 

金田さんは政府渉外やアナウンサーなど全く異なる業種を経験し、さらに、サステナビリティ担当としても、エレクトロニクス、証券、製薬、航空などさまざまな業種の企業を経て、現在はITのNTTデータに勤務するなど、特徴的なキャリアを歩んできています。こうしたキャリアを選択したのは、どのような理由があるのでしょうか。

 

私がキャリアを考える上で大切にしているのは、業務軸を変えて転職する「キャリアチェンジ」(政府渉外→アナウンサー→サステナビリティ)と、業務軸を変えずに転職する「キャリアシフト」(政府渉外軸で2組織、サステナビリティ軸で5組織)を意識しながら、専門性を高めていくことです。ESG経営/CSR活動にはソフト・ローだけでなく、政府規制などのハード・ローにも関わってくるので、政府渉外の業務で得た経験が活きますし、アナウンサー業務は、ステークホルダー・エンゲージメントやメディア・リレーションの面で、「コミュニケーション戦略」の推進に非常に役立っています。

これら二つの過去の業務は、現在のサステナビリティ業務を側面から強力にサポートしている関係にあります。よく考えれば、これは当然の話で、「キャリアチェンジ」したとはいえ、政府渉外、アナウンサー、サステナビリティの三つとも、自分が好きで就いた業務であるため、自分を起点につながっているわけです。他方、「キャリアシフト」ですが、サステナビリティ業務をピボット軸にして、五つの異なる業界を企業の内側から経験してきたこと(ピボット転職)で、サステナビリティ領域の多面的な理解を助けてくれています。

 

最後に若い世代に、SDGsに取り組む際のアドバイスをお願いします。

 

キャリアの話が出ましたので、それで締めたいと思います。「個人益、組織益、社会益が重なるキャリア」を考えてみることをお勧めします。自分の好きなことを強みにして、(組織に所属するのであれば)組織に貢献しながら、組織のリソースを使ってレバレッジを効かせて社会にインパクトのある貢献をする考え方です。

自分は何に対してであれば寝食を忘れて打ち込めるか。好きなことに業務で関われる幸せ、すなわち、個人益を実現しながら、「好きこそものの上手なれ」で専門性を高めて組織益を実現し、社会益を実現する。まず、自分自身の個人益をイメージしながら、SDGsの17ゴールと169 のターゲットをじっくり読んでみてはどうでしょう。SDGsは、自分に適した、将来の社会との関わり方やキャリアを見つけるための“逆引き辞典”としても活用が可能ですから。

 


金田さんのインタビューはウェブ電通報にも掲載されています。

サステナビリティ担当として活動を始めた経緯や、CSR、CSV、ESG、サステナビリティとSDGsをどのように結び付けていくかなど、こちらの記事では触れられなかった情報も盛りだくさん。ぜひ併せてご一読ください。

https://dentsu-ho.com/articles/7244

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