2020.06.22
ナレッジ

SDGs フリークライミング 第3回 「食品プリオーダー」フードロスの未来とは?

 

この連載では「未来予測支援ラボ」が独自の視点から考えた「未来予測キーワード」にもとづいて、フリーなディスカッションを行い、未来に向けての新しいビジネスアイデアを生み出す切り口を提供します!

 

 

*いろいろな立場や考えの人が集まって型にとらわれず、頭を柔軟に、自由に、時にやや荒唐無稽に発想していきますので、必ずしも未来がこの通りに進むかどうかはわかりません。ご了承ください。

 

今回の未来予測キーワード「食品プリオーダー」

 

大量生産・大量消費時代の終焉がうたわれている現代の世の中でも、いまだに「フードロス」問題を解決する決定的な糸口は見つかっていません。日々、多くの賞味期限切れの食材がスーパーや飲食店や家庭で捨てられています。

賞味期限間近の食材が安価で売られる(=価値が下がる)メカニズムを変える、ひとつの方法として「食品プリオーダー」があります。

食品プリオーダーとは、事前に欲しい食品をオンライン上で予約し、店頭で受け取る・もしくは配達してもらうことで割引になる、もしくは、より良い食材が手に入るシステム。

今回は、食品プリオーダーが目指す「食品ロスのない未来」を実現するために、消費者や事業者の意識・行動をどのように変えていけばよいかグループで議論しました。

 

未来予測ラボ 研究員 山口 威

Powered by 未来予測支援ラボ http://dentsu-fsl.jp/articles/344/

 

 

「食品プリオーダー」から2030年を考えると、どんな未来が起こりそうか?

―「食品プリオーダー」というキーワードから、どんな未来が起こり得るか、数人で自由にディスカッションをしてみました。

食材の作り手、売り手、使い手。それぞれができること。

 

山口:コロナ禍によって外出制限や衛生面に対する意識が劇的に変化しつつある中で、スーパーなどの小売店に頼らず食材を手に入れる流れが加速した。事前に買うものをリスト化して、なるべく短時間で買い物を済ませたり、必要なものを予約して受け取ったり、これから買い物にまつわる行動はどんどん変化していきそう。

 

Aさん:「食材宅配サービス」の利用も、コロナ禍でさらに進んでいきそう。わざわざ店舗を訪れることなく必要な食材が手に入るし。

 

Bさん:なるほど。ただ食材宅配サービスって、小売りサイドの食品ロスは軽減できるとしても、ユーザーが届いた食材を使いきれず余ってしまうことって結構ありそう。

 

Cさん:フードロスには「作り手・売り手・使い手」それぞれの問題があるのかも。

 

Aさん:それぞれの視点でこの問題を見てみるということだね。

 

食材を消費する私たちができること:「献立の立て方」が肝

 

Aさん:使い手の責任として、例えばキャベツを一玉買ったら、何日でどのように使い切るか、本当はあらかじめ考えて購入する必要がありそう。​

 

Dさん:確かに。消費者によるフードロスの原因の一つとして、献立の立て方に問題があると思うな。みんなが使っている「レシピサイト」はとても便利である一方、作りたい料理に合わせて都度食材を揃える必要がある。レシピではなく「食材」を基点に料理を考えることができれば、キャベツをどんな料理に使えそうか、何日間で使い切れそうか、という想像力が豊かになって、食材を不必要に買ったり、余らせたりすることも少なくなるのでは?

Cさん:買い物をする前の段階から、料理名でレシピを検索する人は多い。私もその一人。レシピを基点にその日の食事を考えることによって、単発的で無駄な買い物が増えたかも。

 

​Aさん:そういえば、昔の人は冷蔵庫を開けてメニューを考えていた、って言うよね。

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Bさん:余った料理をご近所に「おすそわけ」する文化も、昔はあった。

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Eさん:それでいえば、自分が作った料理をおすそわけできるアプリもあるみたい。

 

Aさん:料理を作り過ぎたから分けるのではなく、事前に予約を受けて個人間で分配するサービスか。プリオーダーの考え方と近いかも。

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Eさん:昔みたいに、地域内のコミュニティーが成熟していれば、そうしたサービスが普及しそう。

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山口:それに、最近は衛生の観点から、普通の人が作った料理のおすそわけ文化がすたれているらしい。この衛生意識はコロナを受けて、今後さらに研ぎ澄まされていきそう。

 

Dさん:確かに、最近はスーパーで販売している食材も、ゴム手袋で買い物したり、自宅に帰ってからも、一度すべて消毒してから使っている。

 

​Bさん:調理した料理のおすそ分けは難しくても、食品を素材のまま交換する、という方法はアリそう。

献立ミスによるフードロス。「主婦」の潜在能力を活用するチャンス?

 

Dさん:献立による食材のロスを考えたとき、買い物コンシェルジュやメニュー提案まで代替してくれる宅配サービスのニーズはありそう。

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Aさん:海外の家政婦さんは、そういった役割を果たしていると聞いたことがある。

 

Dさん:なるほど。例えば、オンラインの家政婦さんがいれば、暮らしがもっとスムーズになって、環境にも負荷がかからない世の中に近づけるのかな。


 

Bさん:主婦の方々の潜在能力をスキルとして切り売りできるから、新しい雇用の創出にもつながりそう!

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Cさん:そういえば、節約のために1週間の献立を事前にデータ上で管理している人もいるみたい。

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Aさん:その発想は、冒頭で話した「レシピ主義」と対極にある考え方かも。

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Eさん:私も、実は最近、エクセルで献立を管理し始めたところ。自分に必要な栄養素を書き出して、それを逆算してメニューを考えられるように設定した。健康に気をつけようと思って始めたんだけど、料理の効率化もできそうだと思って。

 

Dさん:なるほど。週単位での買い物をスケジューリングしてくれるサービスがあると便利かも。

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Bさん:特に子どものいる家庭は毎日献立を考えるのが大変だから、親の負荷も減って良さそう。

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Aさん:ダイエットや体質を改善したい人に向けて、1カ月単位のスケジューラーがあってもいいかもね。

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Eさん:他にも、成長期の子どもがいる家庭用とか、家ごとの情報を元に献立を提案してくれるとありがたい。

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Dさん:目的×人数×期間で料理の選択ができると、必要な食材の量が細かく把握できるから、自然と食品のロスがなくなりそうだね。

 

Dさん:料理した後の残飯ロスは、どう解決すればよいのでしょうか。

 

Aさん:例えば、南極の料理人はロスを作らないように料理していると聞いたことがある。余った食材を活用して、次々と新たなメニューを作るスキルを持ち合わせているらしい。

 

Dさん:カタチを変えて、どんどん進化していくレシピがあるといいかも。

 

「作り手」と「売り手」の場合:テクノロジーで食品ロスを削減できる?

 

山口:海外では、食品ロスの問題や農作物の食中毒事件などを受け、作物をITで管理して生産する、スマート農業的思考が発達している。外出が難しい環境下では「フードプリンティング」や「ロボットによる調理」なども、今後、さらに浸透していくかも。

 

Dさん:食のハイテク化とコミュニティー内のシェアリングエコノミーは共存できるのかな。

 

山口:機械学習を使って、その人の体調等やライフスタイルに合わせて食材をリコメンドして、 プリオーダーやシェアリングサービスの仕組みに取り入れることはできそう。食材の育て方自体もAIが担うことで、食材を育てる、調理する、届ける・共有する、という一連の流れを無駄なく行えると理想だよね。

 

Bさん:そういえば、今年は恵方巻は前売りの方が安い、という情報を目にした。

 

Cさん:お正月のおせちやクリスマスケーキも、事前に予約した方がオトクだよね。

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Aさん:食材や料理を電子決済などで事前に購入した方が、当日に現金で購入するよりも安いという仕組みは面白いかも。事前に需要が把握できるから生産量のロスも少なくなるし。

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山口:これまで、飲食店はメニューの品揃えが豊富で好きなものを選べることに価値があったけど、これからは、一人一人のためにカスタマイズされた調理が消費者には喜ばれるのかも。

 

Bさん:テクノロジーも大切だけど、オンラインショッピングって少し機械的で物足りない気分もする。オンライン上の購買体験がもっと楽しくなるとよいかもしれない。

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Cさん:確かに、コロナ禍ではスーパーに行くことが日頃の唯一の楽しみだった。

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Dさん:今後は、スーパーの役割が両極化していくのかもしれないね。楽しみながら選ぶ場、もしくは、ピンポイントにものを取りに行く場というふうに。

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Bさん:オンライン上で購入する場合も、VR上で商品棚を見渡せるようになると楽しめそう。オンライン上で購入した食材の農家をたどって、別の商品に出合う、という流れも作れそう。

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Cさん:それ、面白い!そういえば、庫内の食材を把握して、料理をリコメンドしてくれる冷蔵庫もあるよね。

 

山口:今後は、パーソナルトレーナーみたいに、個人向けのフードトレーナーのような職種も増えてくるかも。今とるべき栄養に合わせた料理や食材を提案してくれる役割として。

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Eさん:コロナの影響で、オンラインの料理教室がかなり広まったと思う。事前に食材が届いて、画面越しの先生や生徒たちと一緒に料理を作る、という工程を楽しんでいる人が、たくさんいた。残った食材ベースに献立や料理の仕方を教えてくれるオンライン料理教室は、今後需要がありそう。

 

Dさん:事業者側でできることとして、他にも、究極の量り売りみたいなサービスがあってもよさそう。同じ量のものをたくさん売るのではなく、それぞれが必要な量だけ分けて販売する。

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Bさん:確かに、昔の商店街は量り売りのお店が多かった気がする。

 

Dさん:オンラインショッピングサービスの倉庫が巨大な冷蔵庫だと捉えると面白いかも。

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Aさん:今は商品データの管理が進んでいるから、実現性は低くなさそう。

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Cさん:海外では、瓶などの容器を持参すれば、量り売り式に食材を購入できるスーパーもあるみたい。容器を持参するだけで、食材は「必要な分だけ買う」という意識に頭が変わるから面白い。

 

飲食店(事業者)のフードロス、解決のヒントは「エンタメ」にあり?

 

Cさん:自宅以外の学校や施設などのフードロスって、どれくらい深刻なんだろう。

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山口 :事業者側のフードロスと、個人によるフードロスは、約半々と言われているみたい。

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Bさん:小規模の飲食店なら、「まかない」で余った食材はある程度処理できそう。

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Aさん:まかない食を実際に販売するサービスって、ありかもしれないね。

 

​Dさん:飲食店が時間帯別に業態を変える、といった流れは今後出てくるかも。20時までは店内接客をして、それ以降はオーダー制で余った食材をテイクアウトする、とか。

 

Bさん:そういえば日本の飲食店って、余った料理を持って帰ろうとすると衛生的な面で断られるよね。海外ではボックスを渡されて、食べ切れなかった料理を自由に持ち帰ることができるけど。

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Dさん:店内とテイクアウトでメニューを分けるとか、考えられそうですね。モジュール化が必要かもしれません。

 

山口:フードロスって、悪いとわかっていても、食を選んで楽しむということに慣れているから、それを上回る便益がないとなかなか取り組めない、という課題はある。最近は有名人がSNSで視聴者と一緒に画面越しで食事を楽しむ、というエンタメが流行っているけど、そうした仕掛けがないと消費者の意識行動を変えることって難しそう。

 

​Eさん:「同じものを誰かと一緒に食べる」という楽しみをエンタメ化することはできそう。これはコロナ禍の世の中だからこそ共感してもらいやすい価値かも。

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Dさん :オンライン上でみんなと一緒に食べる“給食”を提供する事業とかあっても面白いかも。

 

毎日お昼にお弁当が届いて、画面越しにみんなと一緒に食べるだけで一体感が生まれそう。

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Bさん:確かに!人と食事をする醍醐味って、料理の感想を言い合えること。それから、届いた料理で二次創作とかしても面白そう。

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Eさん:地域ごとに給食を展開すれば、各土地の特性も出て話題になる。

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山口:企業でも活用できそうな仕組みだね。

 

 

そこからどんなビジネスが生まれる?―「どんな未来が起こりそうか」のディスカッションを元に、新たに生まれる可能性のあるビジネスアイデアを出し合いました。

 

◼︎食材おすそわけサービス

食材を必要な分だけ買い取り・交換できるサービス。単身暮らしの悩みのひとつに「パック売りの食材を一人で使い切れず、気がつくと賞味期限が切れてしまう」という問題がある。自分だけでは使い切れない食材をご近所の住人に売ったり、交換したりすることで、賢く × エコに料理を楽しめる。

 

◼︎オンライン家政婦

 

献立をうまく立てられず、つい食材を余らせてしまう家庭に、買い物や料理にまつわるコンサルティングを行うオンラインサービス。目的(例:ダイエット) 、世帯人数(例:大人2人・子ども1人)、期間(1週間分)に合わせて、最適な献立をプランニング。いつ、どんな食材を、どのくらい購入すればよいか知らせてくれる。無駄な買い物を防ぐことができる上に、家族の健康維持や節約も可能に。

 

◼︎次世代TECHスーパー

 

オンラインでの食品購入をもっと楽しめるように、VR上で商品棚を再現。さまざまな種類の商品の中から自分が気に入ったものを選ぶ、オフラインのショッピングならではの有機的な感覚を再現。オンライン上で購入した商品の生産元をベースに他の食材も検索できるようにすることで、農家を軸にした商品選びも実現。

 

◼︎余り食材専用・オンライン料理教室

人は…と断罪してしまうと持続可能性はありません。現代の技術進展を生かしてこのテクニックを身につける着眼点が必要です

 

 

ふりかえり

 

「量り売り」という昔からあった取引、「家政婦さん」というこれも伝統あるプロフェッショナルな存在、「献立」という個人技と暗黙知の世界。オンライン技術やAIによる最適化を用いることで、これらをあらためて家庭生活に取り入れるアイデアが出てきます。かつては時間や空間的に制約があって難題だったことを、イノベーティブな技術革新が解決に持っていく。これはSDGsの考え方の大事な点です。

 

飲食店など事業者サイドのロス対策も難題です。消費者は常に“食べたいものが食べたいときに食べたい量で出てくる”お店を期待しています。必然的に事業者側には過剰な食材の待機が求められます。これは消費者サイドに「充足感へ欲求」があるからでしょう。食の根源はもちろん健康に生きるための栄養摂取ですが、心理的な充足感も無視できないことは言うまでもありません。フリークライミングで、事業者サイドのロス対策としてエンターテインメントの提案が出てきたのは、その点で示唆的です。

 

 

エンターテインメントこそは心理的な充足を得るものの代表です。「シェフの気まぐれサラダ」が実は当座の在庫野菜を使ったものだというのは薄々わかっていても、私たちはこの「シェフの気まぐれ」にエンターテインメント性を見いだします。また、ひとりで食べる食事は栄養摂取ですが、みんなで同じものを食べればエンターテインメント空間が生まれます。今回出ているアイデアも、このようなエンターテインメント性をオンライン技術などの進展の中で出していこうというものです。

 

「食品プリオーダー」の精神とは究極のところ、“食べたいものを食べたい量だけやりとりする”という、素朴な、しかし、なかなかに困難な「自制心」に行き着きます。技術革新がその自制心をアシストする未来がやってくるかもしれません。もちろん世界を見渡せば日々の食事をつなぐので精いっぱいな人がたくさんいることは周知の事実です。日本でも同様です。だからこそ、ロスに直面しがちな人は少しでも工夫して、世界の食の循環に貢献したいものです。

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