コロナ禍で大きく変わった私たちの食生活
日本で新型コロナウイルス感染拡大の脅威を感じ始めたのは、おそらく横浜に寄港したクルーズ船内での感染が発覚した2月ごろからではないかと思います。その後、3月13日に特別措置法が成立、4月7日に7都府県、16日に全国に向けて緊急事態宣言が発出されました。
その期間、多くの学校が休校となり、卒業式や入学式が簡易化されたり中止となりました。会社では、リモートワークの導入が進み、会議やセミナーはもとより入社式もオンラインで行われたところも少なくなかったのではないかと思います。そう、ウイルスの感染拡大によって、子どもも大人も皆、ステイホーム生活を余儀なくされたと言っていいでしょう。
コロナ禍で、私たちの生活は大きく変わりました。
(→Web電通報:リモート飲み会だけじゃない?!コロナで変わった私たちの食生活)
ACRの調査※1によると、全国の12~69歳において85%以上の人が新型コロナウイルスの発生よって「生活が変わった」と回答しています。その変化として最も「増えた」のが「在宅している時間」、そして最も「減った」のが「飲食店に行くこと」で、いずれも75%を超える結果でした。外食ができなくなり、休校や在宅勤務などで家にいる時間が増えれば、家での食事機会・時間が増えることは必至です。
電通「食生活ラボ」の調査※2でも、緊急事態宣言後に増えたものとして「自宅での食事」(59.7%)や「家族と一緒に食事をする機会」(41%)、「自分で料理をする機会」(31%)が増えたとする人が多く、減ったのはダントツで「外食する機会」(52.7%)でした。
また、ウイルスに罹患しないことはもとより、病院に行きづらい状況下での健康維持のために「栄養バランス」や「免疫力」を意識した食事や、家での食事機会の増加によって「まとめ買い」や「節約を意識した食材購入」の増えた人が多いという結果からも、いかにコロナが私たちの食生活に大きな影響を与えたかが分かります。
※2出典:新型コロナウイルス感染拡大における食生活の変化についての生活者調査
(電通「食生活ラボ」調べ/対象:東阪20~59歳男女個人300s 調査会社:株式会社ドゥ・ハウス)
急激に高まった安心・安全意識と健康への配慮
「栄養バランス」や「免疫力」向上を意識した食事が増えた人のうち、免疫力を意識した食事は9割以上の人が、栄養バランスを考えた食事は8割近くが、この状況が終息した後も継続したいと回答しました。まとめ買いや節約志向においても、少なからず継続意向が見られます。
社会が危機的状況になると、自分の身を守るのが第一になるため、人はどうしても利己的な行動をとってしまうものです。トイレットペーパーや食料の買い占めはまさにその一例といえるでしょう。
マズローの欲求段階説にもあるように、人は社会が不安定な状況になると生理的な欲求や安全の欲求が高まります。東日本大震災のときも、安全への欲求が高まり、保存食の買い占め・まとめ買いが起こり、健康的な食事への意識が高まり、そして外食が激減しました。
大震災と新型ウイルスの感染拡大、起こった出来事は全く異なりますが、社会的な危機が起きたとき、人の欲求は同じ方向に向かい、そして生命維持、つまり生理的欲求にも関係する「食」は非常に影響を受けやすいことが分かります。
SDGsの17のゴールのうち、日本が達成できているとされている※3のは4(教育)、9(産業と技術革新)のみです。しかしながら、図らずもコロナ禍において私たちは、安全や健康がおびやかされる経験をし、それらの課題がまさに自分ゴト化されました。
コロナによって見えた利他の精神
社会が危機的状況において、人が利己的になってしまうことはある意味致し方のないことでしょう。でも一方で、そんな状況下でも私たちは利他の精神を持ち、それが大きな力になることをコロナ禍で体験しました。
全国の4人に3人以上が飲食店に行く回数が減った、行かなくなったとなれば、大きな打撃を受けたのは言うまでもなく外食産業です。同時に、そういった飲食店を中心に食材を卸していた生産者、卸売業者や商社、メーカー企業にも大きな影響が出ていることは皆さんもご存じの通りでしょう。
電通「食生活ラボ」では、「新型コロナウイルス感染拡大による食への影響と変化・事例」※4というレポートを作成し定期的に更新、発行しているのですが、そこに集まっている200を超える飲食事例のうち最も多いのが「食を通して困っている人を支援」するもの。困っている飲食店、生産者への支援をはじめ、医療従事者への支援など、全国でなんとかして困っている人たちを助けようとする取り組みが多いことが見て取れます。
実際、困っている生産者や事業者を支援する輪が広がっている様子は、SNS上でも垣間見られます。(→ハフポスト記事リンク)こちらの記事「「食」を通して考える。コロナ禍での生活の変化は、社会課題につながるのか」でも言及していますが、コロナによって抱えることになった大量の在庫の食品に支援を求める投稿があると、全国からそれを購入したいという声が集まり、あっという間に完売している様子を見ていると、困っている人を助けたいという、利他の精神が全国で起きていることを感じずにはいられません。
このような動きは、85%以上の人がコロナによる生活の変化を実感したことで、これらの社会課題が自分ゴト化されたことが大きいのではないかと私は思っています。自分もコロナ禍の生活で困っていることはある。でも、自分よりもっともっと困っている人がいるならば、同じ社会の共同体として助けたい、という潜在的な思いによるものではないかと思うのです。
さらに、在宅を余儀なくされたことで一気にあらゆるもののオンライン化が進んだことも、それを後押ししたといえるでしょう。リモートでできることは想像以上に多いことを私たちは改めて実感しました。直接その場に行けなくても、直接会えなくても、リモートによって困っている人を助けることができることも知りました。
SDGsは、地球、そして地球上の困っている人たちを救うことを目的として策定されたものです。コロナ禍で、私たちは改めて安心に暮らせること、健康であることのありがたさを実感し、そして、困っている人に思いをはせる経験をしました。この経験は、私たちと地球課題の解決を目的としたSDGsとの距離を近づけたのではないかと思います。
※1出典:『コロナ禍』における生活者意識調査~ACR/exパネル調査より~
(対象:男女個人12~69歳12,342s/70~74歳643s エリア:東京50㎞圏/関西地区/名古屋地区/九州北部地区/札幌地区/仙台地区)
※2出典:新型コロナウイルス感染拡大における食生活の変化についての生活者調査
(電通「食生活ラボ」調べ/対象:東阪20~59歳男女個人300s 調査会社:株式会社ドゥ・ハウス)
※3「SDG Index and Dashboards Report」2019.7 より
※42月末からのコロナに関わる飲食事例を収集し、電通ならびにグループ会社向けのレポートとして作成。
<プロフィール>
電通「食生活ラボ」HP(リンク)
電通のラボ:電通 食生活ラボ(リンク)
日本の食生活の「今」を知り「これから」を共創していく、食に特化したオープン型ラボです。 1983年に始動した「食マップ」プロジェクトを発展させて2010年に発足。以来、知見の集積とアップデートを重ねています。