第7回「サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内」が2月14・15日に開催されました。昨年に引き続き、現地で取材した概要をリポートします。
どの講演もセッションも見逃せないものばかりでしたが、それらひとつひとつをご紹介することはとてもできません。サステナビリティに関わる方、関心のある方の中には、ライブ配信等で視聴された方も多くいらっしゃると思いますが、SDGsは幅広いマテリアリティに及びますので、この記事ではまず今年の大きな潮流を感じてもらえたら幸いです。
開催場所を昨年の横浜・みなとみらいから東京・丸の内に移し、参加者数は、半数以上がオンライン参加だった昨年の4513人から、今年は8割近くが現地参加の5312人に増えました。メイン会場の東京国際フォーラムだけでなく、協賛スポンサーとの連携により、丸の内エリアをサステナビリティに染めた2日間となりました。

経営視点と自分視点
今年のテーマは、「RECENTER & ACCELERATE」です。
これの意味するところが、まさに今年を象徴していたように思えました。
昨年はいろんなキーワードが一気に増えたと感じました。グローバルでの標準化も次々と進み、アルファベットスープなどともいわれています。環境=サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラル、人権=ダイバーシティ&インクルージョンやウェルビーイング、そして経営=ESGやパーパス、さらに人的資本や自然資本など、それぞれに進化や広がりを見せていたと思います。
事業(マーケティング)戦略から経営(コーポレート)戦略へ、トレードオフからトレードオンヘ、ともいわれていましたが、今年はいよいよサステナビリティ経営として、収斂(しゅうれん)されていった感じがします。まさに「RECENTER」です。

もうひとつ気になったのが、「自分」という視点。それまでこのサステナビリティのテーマにおいては、自分が主語になることは少なく、業界とか社会とか壁を越えた共創が必要、などといわれ続けてきました。もちろん、それが変わったわけではありません。それでも理想と現実、笛吹けど踊らず、というような、経営と事業がつながらない、経営と現場がつながらない、そんな課題をよく耳にするようになりました。
ガイドラインや解説を読んでやるべき内容は理解できた。でも膨大なその情報の中で、本当に自社あるいは自分が今すぐ取り組むべきことは何なのだろうか、と多くの経営者やサステナビリティ担当者が悩んでいます。多様性が求められる時代に、必要だから、大事だからといった理由だけで、ひとりひとりの行動変容が促されるものではない、ということでしょうか。DEIやウェルビーイングのような価値観が浸透していくことにより、それぞれ「自分の強み」を見直そう、「自分らしさ」を生かそう、といった具体的な動きが見えてきました。
「自分ゴト化」あるいは「自分らしさ」。それこそが、サステナビリティの取り組みをドライブするのではないか、と受け止めました。まさにそれが「ACCELERATE」なのかもしれません。

多様性が生み出す「地域性」と「教育」
この国際会議の大きな特徴が、「多様性」であることは変わりません。もっとテーマを絞り、参加属性を絞ったカンファレンスはたくさんありますが、この会議はサステナビリティ×ブランドをテーマにしているので、そこに関連するあらゆるテーマが包含されています。ですから、すべてのセッションをすべての参加者に見てもらおう、というつもりはもともとないのです。ないのですが、それらがすべて実はつながっているということを体験できるのです。
例えば、「地域性」と「教育」です。日本はアジアの小さな島国です。もちろんそれを否定はしませんが、だいたいそういわれる時はデメリットについて語られることが多い気がしています。ですが、そのメリットを生かそう、という視点に立つことが重要で、例えばこの国際会議でも、デンマーク現地で活躍されている方々の話を聞いていると、日本もやればきっとできるぞ、と思わせてくれます。日本はどうしても欧米と比較して、マイナスの面を減らそうとするのですが、もっとプラスの面を伸ばそうとすることも、考えていければいいと思います。まさに、教育が大きな影響を及ぼしているところでもありますので、日本という独自の地域に根差した教育とも連携してできることがあるはずだと、これもデンマークの話を聞いていて考えさせられました。
世界一幸せな国といわれるデンマークの国土面積、人口をご存じでしょうか。面積は九州くらい、人口は600万人くらいです(ちなみに九州には1400万人がいます)。東京や大阪の人口(密度)を考えれば、九州でできること、九州の可能性を感じずにはいられません。地方移住や地方創生が、サステナブルな日本を創る試金石になる、と思いませんか。熱意ある若者や地方自治体が、あるいは放置され風化しそうな伝統技術や自然資本が、注目されてきています。スケールできるか、という視点も大事ですが、まずはスモールスタート。そんな考え方も、この国際会議の多様性から生まれていると感じました。
ちなみに、デンマークはDX先進国としても有名ですが、自然とつながる教育国としても実績を積んでいます。これも二律背反ではなく、両立できることを実証しているので、大いに参考になる思っています。

この国際会議を現地で取材してみて最後に触れたいのは、日本の可能性です。日本は、産業革命を起こした欧州でもなく、IT革命を起こしたアメリカでもなく、中国やインドのようなアジアの大国でもありません。それでも日本には日本の独自性があり、世界を見渡しても唯一無二の自然や文化が継承されています。さらに可能性を秘めた多くの先進技術開発にも、多くの事業者・研究者が取り組んでいます。この国際会議でも新たなエネルギーとして注目される水素について、日本のいよいよ具体的な取り組みの話を聞き、希望に胸が膨らみました。競争力ある日本独自の自然や文化の多様性を尊重し、自らの地道な体験をもとに身近な人と声を掛け合うことで、ひとりひとりが本当に大切なものは何かに気づき、生きる喜びや誇りを取り戻せるのではないかと思います。
将来世代の視点で、日本の成長や豊かさの意味を見直す、そんな時代がいよいよ来ているのだと実感した、2日間でした。
Vol.2ではまた違った視点で、リポートしますので、どうぞお楽しみに。