今年の2月、東京・丸の内で行われた、第7回サステナブル・ブランド国際会議2023。
運営元である株式会社博展の発表によると、現地参加人数は4,000人を超えて過去最高だったようです。それにもかかわらず、例年に比べると、さほど混みあっている印象はありませんでした。それは、会場が「東京国際フォーラム」(以下国際フォーラム)「JPタワー・KITTE」(以下JPタワー)「丸の内ビルディング」(以下丸ビル)の3カ所に分かれていたからではないかと思いますが、この、「東京・丸の内エリアを有効活用しての開催」も今年の会議の特徴のひとつでした。会議の模様をリポートします。
Day1(2月14日)
期待の高まる始まり
国際フォーラムのエスカレーターを乗りついで登っていった先の7階、1,000人くらいが収容可能なホールで、10時少し前からPlenary Sessions(国内外のサステナビリティ有識者、先進ブランドの代表者による基調講演)が始まりました。
オープニングからいきなり強烈なインパクトを残したセッション「心を動かす、気づきを促す、サスティナビリティのためのデータビジュアライゼーション」では、新型コロナウイルスのゲノムデータからその拡散や変異の様子を“可視化”した事例が紹介されました。次から次へと目に飛び込んでくる、データから作られたとは思えないほどの動的な映像は圧巻だったのですが、「あ、これ見たことがある」と感じたのは私だけではなかったと思います。報道で目にしていたからなのですが、数値やグラフの羅列だけだったら記憶に残ったでしょうか。あるいは興味すら持たなかったかもしれません。一見、ひたすら膨大で無機質な専門データも、共創も含めた分析・見せ方の工夫しだいでは自分事化や新たな発見につなげることができるし、それはサステナビリティにおいても大いに有効そうだと、体感させてもらえたダイナミックなプレゼンテーションでした。

また、2006年のノーベル平和賞を受賞した、貧困層を対象としたマイクロ・クレジット(少額無担保融資)事業創案の経緯と、それを実現・拡大させた意志について語られたムハマド・ユヌス博士のセッション「3 Zero Clubを立ち上げたいという私の強い思い」では、意志と実感を伴う一つ一つの言葉の重みに心を揺さぶられました。「何も知らなかったし、どうすれば人の役に立つのかも分からなかった」「自分が何かできるとは思っていなかった」ただ、「何か役に立ちたい、何かできるはずだと考えた」。つまり、HOWもWHATもなかったが、WHYがあり、それが原動力となってすべてを成しえたということなのですが、日常的には、結果だけを目にしていたり先にCANを考えたりするケースも多いなか、このことを本来あるべき順番で(そうなるとWHYという表現が適切でないかもしれませんが)、事象としても手段としてもここまで現実的に感じたのは初めてだったように思います。現在進行形で伝記を見ているようでした。
先に行われていた「RECENTER&ACCELARATE」の講演では、「“希望”は、選択であり、訓練であり、育むことができる」としたうえで、サステナブルとビジネスを両立する難しさに対して「勇気ある楽観」という考え方が示されていたのですが、楽観的であろうと現実的であろうと、けん引していく強力なリーダーたちには確固たる「主義」が存在することを改めて認識し、その静かな迫力に圧倒されてしまいました。

今年の会議が終わってしばらくして、テーマだった「RECENTER & ACCELERATE」の具体的な内容をまとめるとしたら、ポイントは「レポーティング」「本質」「おのおのの志」の3つではないかと考えたのですが、少なくとも「レポーティング」と「おのおのの志」については、これら1日目 のPlenary、会議の出だしからすぐにその重要性が示されていたのです。なお、この3つのポイントについては最後にまた改めて触れたいと思います。
東京・丸の内エリアで行われたオープンセミナー
Day1はそのあと、主に、今年の特別企画である「Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION」の様子を見て回りました。

丸ビルに移動する途中で立ち寄った、新東京ビルにある「Deloitte Tohmatsu Innovation Park」や明治安田生命ビルの「MYギャラリー」、JPタワーから戻るときにのぞいた三菱商事ビルの「MC FOREST」など、メインの3会場を巡る動線上に参加者30人程度の小ぶりな会場が7カ所点在していて、「サステナビリティ」をベースに「エネルギー/自然資本/循環」「アート/メタバース」「パーパス/共創/地方創生」「フード/ウェルビーイング」を題材としたオープンセミナーが実施されていました。お昼時と仕事終わりの夕方に、近場で気軽にこれらのセミナーを聴講できる状況は「丸の内のビジネスパーソンが“仕事の合間に”サステナビリティに関する学びと発見ができる場」というコンセプトそのものだったと思います。

参加者は、Plenary Sessionsと比べると全体的に比較的若い印象で、スーツ姿でない方も多く見られました。事前申込制とはいえ席に余裕があれば飛び入り参加もOKで(要申し込み)会場自体はオープンな雰囲気ながら、ほとんどは満席、熱心に耳を傾けメモを取る参加者の熱量はメイン会場に勝るとも劣らず、端の方にいても伝わってくるものでした。数年前まで、サステナビリティ関連のセミナーは「一部の関係者が専門的な講演会に出席している」印象でしたが、それに比べると、多様な人たちが積極的に情報を取りにきている様子はずいぶん変わって見えて、サステナビリティへの関心の浸透をうかがわせました。

(後編につづく)
撮影(一部):サステナブル・ブランド ジャパン